2014年02月24日

チョムスキー博士


ノーム・チョムスキーと言えば、言語学を少しでも齧ったことのある人にとっては、王様のような存在。彼は、専門の言語学の分野だけではなく、政治的にも非常にはっきりと意見を述べる人なんですよね。イラク戦争のときだったか、自分の国アメリカの政策の間違いを鋭く指摘した書物が日本語にも翻訳されて書店に並んでいました。(私、読んでいないけど)

このチョムスキー博士が今回来日するそうで、それに先立ち、ジャパンタイムズが独占インタビューを掲載しました。

まず、博士の紹介の仕方がすごい。

Noam Chomsky was for years among the top 10 most quoted academics on the planet, edged out only by William Shakespeare, Karl Marx and Aristotle.(ノーム・チョムスキーは長年にわたり、地球上の学者の中で引用される回数が多い10傑に入る人物であり、彼に勝るのはシェークスピア、カール・マルクス、アリストテレスくらいだろう)

ねえ、すごい紹介の仕方でしょう。でも、こんな紹介も聞いたことがある。「世界のどこからでも、ピカソ宛に手紙を書けば、「ピカソ様」と書くだけで住所がなくても届く。それと同じでチョムスキーも、名前だけで手紙が届く人物だ」と。

さて、彼のインタビューで、印象的だったところを紹介します。日本との関係を聞かれて

In the early 1940s, as a young teenager, I was utterly appalled by the racist and jingoist hysteria of the anti-Japanese propaganda.(1940年代初頭、10代だった私は人種差別主義者や国粋主義者がヒステリックに反日のプロパガンダを繰り広げているのに、ただ呆然としていた)

The German were evil, but treated with some respect: They were, after all, blond Aryan types, just like our imaginary self-image.(ドイツ人は悪魔だったが、それでもある種の尊敬をもって扱われていた。所詮彼らは金髪の白人。我々自身と同じ姿なのだ)

Aryanはアーリア人、ナチスでは、ユダヤ人ではない白人を指していたそうです。(っていうか、常識?なんか、そういう呼び名を聞いたことがあるような気もする・・・)

Japanese were mere vermin, to be crushed like ants. Enough was reported about the firebombing of cities in Japan to recognize that major war crimes were underway, worse in many ways than the atom bombs.(日本人はノミ・シラミの類。踏み殺される蟻のような存在。これでもかというほど、日本の各都市へ投下された爆弾のニュースが報告され、大々的な戦争犯罪が行われていた。それは原子爆弾よりもひどかった)

自分の国の過ちを冷静に客観的に語っています。そして、原爆よりもひどいと言っていますが、原爆を軽視しているわけではありません。

インタビュアが
I heard a story once that you were so appalled by the bombing of Hiroshima and the reaction of Americans that you had to go off and mourn alone…(広島の原爆とそれに対するアメリカ人の反応に衝撃を受けて、あなたは一人で手をあわせるために日本に来たと聞いています)

と水を向けます。

Yes. On Aug 6, 1945, I was at a summer camp for children when the atomic bombing of Hiroshima was announced over the public address system. Everyone listened, and then at once went on to their next activity: baseball, swimming, et cetera. Not a comment. I was practically speechless with shock, both at the horrifying events and at the null reaction. So what? More Japs incinerated. And since we have the bomb and no one else does, great: we can rule the world and everyone will be happy.(はい。1945年8月6日、広島原爆投下が拡声装置により発表されたとき、私は夏の子供キャンプに参加していました。みな、そのニュースに耳を傾けました。そしてすぐに次の遊びに移っていきました。野球や水泳などにね。ひと言も感想は聞かれませんでした。私はショックで口がきけない状態でした。その恐ろしい出来事にも、また周囲の反応の鈍さにも。だから?またジャップが焼かれただけでしょ?そして、原爆を落としたのは我々。ほかのどの国でもない。すごいじゃない。我々は世界を支配し、そしてみんな幸せになれる)

この件りが、当時のアメリカの状況って、こんなかんじだったんだなあ、と思い知らされますし、そんな周囲の「常識」に染まることなく、ノーム少年はショックを受けるだけの感受性、公平な目をもっていたんだなあということに感動もします。

私も、自国だけの「常識」に染まらず、出来るだけ公平な目をもっていたい、と改めて思ったインタビューでした。

このような記事を載せてくれるから、ジャパンタイムズは、1日遅れであっても、値上げしても、購読し続ける理由となっています。


posted by Monterey at 22:18| Comment(6) | Japan Times | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
チョムスキー氏の来日のニュースはすごいなと思いました。だいぶお年を召してあっても変わらず発信をなさっているのだな、と思いましたが、今回はどういう趣旨での来日なのかな、とか、今何かしらの発信する(もしくはしてもらう)必要を受けてのことなのだろうか、と興味があります。博士の講演を聞ける方たちがちょっとうらやましいです。

これまで言語学やSocial justiceに関しる著作を少しだけ読んでますが、ものすごい知識と思考の深さと広がりに裏打ちされた鋭さによくシビレていたものです。

こちらでチョムスキーの名前を言っても、一般的なアメリカ人はほとんど知らないようです。たぶん、彼のような考え方の人物のことは、意図的に知らされないようにされてきたのではないかなと思います。もしくは、彼の考え方は、純粋に人気が出なかったのか、わかりませんが・・。でも、知る人は知っている、といった感じではないでしょうか。

以前日本に居た時知り合ったアメリカ人女性とチョムスキーのことで盛り上がっていた時、冗談で、『公立の図書館などで彼の著書を借りたりすると、それだけで、当局からリストに挙げられてしまうかもだよね、アメリカのビザが降りないかもだよね、だから本屋さんでキャッシュで買えば大丈夫だろね、だけど注文となると名前が残ってしまうかなぁ』、などと話していたものです。

ご高齢なので、とにかくご無事なご旅行をと願うばかりです。
Posted by deziz at 2014年02月25日 13:59
dezizさん

チョムスキー博士が、恐れることなく反政府的意見を公に述べる人というイメージはありましたが、ビザがおりないなんて冗談が出るほど筋金入りかあ、と、dezizさんのコメントを読みながら、感慨深いものがありました。

そのチョムスキー博士を敬愛するということは、dezizさんも、私と似た思想の持ち主かなと、なんだか嬉しくなりました。なんとなく、世の中、その逆のほうに流れているようで、怖い私です。

思想の件を抜きにしても、言語学の分野でも世界の宝ですからね。同時代を生きているということだけでも、光栄ですね。

追伸 dezizさんも、きっとドラマThe West Wing お好きですよね?


Posted by monto at 2014年02月25日 22:26
モントさん、再びすみません。
ドラマThe West Wingのことをお聞き下さってましたが、実は私、全然ドラマを見ないので知らないのですよ。すみません。ドラマを見ないというより、時間的にも精神的にも余裕がなくてじっくり座ってTVの画面で何か見るということがないのです(涙)。

チョムスキーは「世界の宝」、確かに・・。貴重な存在だと思います。知性が最も有効に活用されている人の例を見ているような気がします。

反知性主義に飲まれて行く方向に戻りたくないものです。今の世の中、個人がいとも簡単に世界と繋がることが出来てるわけですから、何かを盲信・盲従しなくていいはずだと思います。知らないうちにその自由を放棄させられていたら、後の祭りでしょうけれども・・・。そうなっていっていないかという見極めの感性ぐらいは持っていたいものだと思います、自己の責任において・・。

何だかかたいこと書いてしまいましたね。それではまた。



Posted by deziz at 2014年02月26日 20:26
モントさん、再びすみません。
ドラマThe West Wingのことをお聞き下さってましたが、実は私、全然ドラマを見ないので知らないのですよ。すみません。ドラマを見ないというより、時間的にも精神的にも余裕がなくてじっくり座ってTVの画面で何か見るということがないのです(涙)。

チョムスキーは「世界の宝」、確かに・・。貴重な存在だと思います。知性が最も有効に活用されている人の例を見ているような気がします。

反知性主義に飲まれて行く方向に戻りたくないものです。今の世の中、個人がいとも簡単に世界と繋がることが出来てるわけですから、何かを盲信・盲従しなくていいはずだと思います。知らないうちにその自由を放棄させられていたら、後の祭りでしょうけれども・・・。そうなっていっていないかという見極めの感性ぐらいは持っていたいものだと思います、自己の責任において・・。

何だかかたいこと書いてしまいましたね。それではまた。

Posted by deziz at 2014年02月26日 20:27
最初に送信したのがエラーになったので、2度目も送ってしまいました。お詫びします。
Posted by deziz at 2014年02月26日 20:43
dezizさん

<<今の世の中、個人がいとも簡単に世界と繋がることが出来てるわけですから、何かを盲信・盲従しなくていいはずだと思います。知らないうちにその自由を放棄させられていたら、後の祭りでしょうけれども・・・。そうなっていっていないかという見極めの感性ぐらいは持っていたいものだと思います、自己の責任において・・。

たしかに、おっしゃるとおりですね。

オリンピック報道も、国対国の戦いになるので、ときに、エスカレートして、スポーツマンシップと正反対の方向に行ってしまうこともあるなあと、観戦を楽しみにしている一方で、その報道の仕方を危惧することもあります。今回のオリンピックでも・・・

The West Wingは、きっとdezizさんも感動するはずなのになあ・・・気が向いたら、見てみてくださいね。では。


Posted by monto at 2014年02月27日 00:51
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